漫画『鈴木先生』

 全ての教育に携わる方々。また、今現在中学校、高校などのある程度の集団生活が強要され、日々軋轢に悩まされ、不安を感じる方々。金八先生が嫌いな方。是非読まれたい。

 

 自分がいかに学校教育と名付けられた理想論、きれいごとに洗脳されていたか、自分自身で答えを求めるということを怠ってきたのか。それを強烈に実感させられる。

 

 この漫画はギャグ漫画であるとも、真面目路線に振り切っているとも言い難く、なんとも絶妙なところをふわふわと漂っている感じがする。初めこそ、フランクに読めなくもないが、徐々にこの漫画がもつ熱量に圧倒され始める。

 この漫画では全体的にテンションが高い。2年A組担任の鈴木先生初め、その生徒たち、また彼らの親、関わるもの、それらの発言、言動が総じて気迫のこもったものなのである。

 一見すると滑稽に思えるほどのテンションなのでえるが、自分の中学時代、高校時代を振り返ったみると、たしかになかなか緊張感のある生活だったなと思う。

 ある日仲の良かった友達と喧嘩をし、口を聞かなくなった。それだけで私が今まで住んでいた世界が急に手のひら返しされたような、世界全てが、そのものが一変してしまうような感覚を思い出す。クラス浮く。クラスを敵に回す。こんなことは恐ろしくて考えたくもなかった。

 中高生にとって学校生活というのが自分の世界を埋める割合は相当大きいし、なんなら全てだった。その世界に裏切られる感覚。それは世界の終末、自分自身の終わりを意味するようなものだったかもしれない。

 この漫画の異常とも取れるテンションの高さが、当時の私たちの緊張感を表していると解釈すればかなり納得がいく。

 

 どれだけ自分が学校生活をスカして生きてきてしまったか。心に重くのしかかる。

 

 これを読むと世の中の諸問題、特に人間関係の問題、エゴとエゴのぶつかり合いに対し、簡単に答えを出せる訳ではないと分かる。

 

 今まで当たり前のもって生きてきたその価値観。それはどういう論理を辿って生じたものか、いまいちど振り返ってみて欲しい。それは真に正しいと言えるか。そもそも答えを出す必要があるのか。この漫画を読みながら、鈴木先生及びその周りの人が抱える諸問題について考えてみて欲しい。論理を追うだけでも大変なシーンもあるかもしれない。ただ、あなたの人格形成において必ず良い役割を果たすだろう。

 

 

 

 まあそんな固くなって読むものでもないと思うし、真剣に読んでれば、この漫画のもつ違和感、異常さに笑ってしまう瞬間は何度もあると思う。

 実際、雨ガッパスタイル・・・いかし過ぎだぜ!は私自身大爆笑だった。